バトン承継コンサルタントの浅野泰生です。
今日は「後継経営者が陥りがちな罠」について、お伝えします。

後継社長と創業社長の違い

先月、経営者が集まる勉強会に、ゲスト講師として参加しました。
私は、参加者の方々のワークショップの後に、総括としてコメントを求められました。

「リーダーに必要なもの」がテーマ。
そのなかで、あるグループの発表が興味深い内容でした。

「リーダー」をトップリーダーと捉え、創業社長と後継社長との対比をしていました。

創業社長は、
四六時中仕事のことを考えている
想いが強い
信念がある、など

後継社長は、
仕事とプライベートを分けている
事業に対する思い入れが弱い
自分の信条は経営に反映されていない、など

グループには、それぞれの立場の経営者がいて、正直な感じ方や捉え方をまとめたということでした。

私は2014年から5年半の間、後継者として会社の舵取りをしてきました。今現在は、創業者として経営しています。
双方の立場を経験すると、その発表の意味が実感値として把握できました。

創業社長も後継社長も、経営の原理原則は同じだと思います。
ただ、それぞれが感じる苦労の種類は、それぞれで違うというのが、私が経験者として断言できることです。

後継経営者の組織施策がうまくいかない原因

私は、参加者の皆さんの発表を受けて、20分くらいの総括、かつ、ミニ講義をしました。
以下、講義の抜粋です。

会社の経営に必要なことは、次の3つ。
⑴目的・目標を掲げること
⑵事業の戦略を立てること
⑶実行する組織をつくること

これは創業者も後継者も同じですが、後継者の場合、
⑴は先代以前のものを変えないまま、
⑵も軌道に乗った事業を引き継いでいるため、改めて立案する必要もなく、
⑶の組織の粗探しをして、そこをテコ入れしている
ケースがほとんどです。

これまで300人以上の後継経営者と直接経営について話してきました。
クレドをつくって唱和している、幹部研修プログラムを導入した、新卒採用を始めた、などなど。
施策そのものを否定しているわけではありませんが、その8割方がうまくいっていない実態を見てきました。
その原因はどこにあるのか?

端的に言えば、目に見えている⑶ばかりに手をつけ、見えにくい⑵を疎かにし、信念・信条がなければカタチにできない⑴を放置しているから。
真っ先に取り組むべきは、後継社長が自身の信条を明確にして、⑴の目的・目標を自ら掲げることです。

⑴を明確にしたうえで、それに沿った⑵の戦略を立案し、最後に、それらの事業を実行するために必要な⑶の組織をつくり上げる、という順番です。
上から順番に下に降りてくる、というイメージです。

8割方がうまくいっていないのは、後継者の信条がないのか、言葉になっていないだけなのか、また、当然、自分で商売(事業)をつくってこなかったので、組織から着手してしまう。
このような悪循環に陥ってしまうのです。

⑴の目的や⑵の戦略は創業者“仕様”になっているのに、⑶の組織や社員に求めるものだけ後継者“仕様”になっているため、ミスマッチを起こしてしまうのではないか、というのが私の結論です。
ほとんどの創業者は、⑴から順番に考えていきます。⑴や⑵は変えられないもの、タブーだと思って手をつけないのが、後継経営者が陥りがちな罠になります。

以上、こんなことを伝えました。

先代以前のものをそっくりそのまま守り続けて会社を潰すよりも、後継者の責任において変えるものを積極的に変えて、引き継いだ会社を成長させるべき!
というのが私の持論です。

もし今回お話した内容に少しでも該当する後継経営者がいらっしゃれば、まずは自分の信条・信念を言葉にすることから始めてみましょう!