バトン承継コンサルタントの浅野泰生です。

ゴールデンウィークが明けたら、5月ももう半分終わりですね。

さて、本日は「後継者が育たないのは本当か?」ということについてお伝えします。

創業社長の「まだまだ早い」という言葉

創業社長と話をしていると

「後継者が育たない」

「息子に継がせるには、まだ早い」

とよく聞きます。

本当にそうなのでしょうか?

ぬくぬくと何の苦労もなく育てられ、会社のお金を自分のものと勘違いしているような、ドラ息子をたまに見かけます。

これは論外です。

育つ育たない、早い遅いの前に、継がさないことが賢明な判断です。

やり手の創業社長でも、血がつながっているという事実が判断を鈍らせているケースを目の当たりにすることがあります。

会社のためだけでなく、社会のためにも冷静な判断をしてほしいものです。

一方、しっかりした考え方を持ち、創業社長とタイプは違えど、立派な経営者になるだろうな、と感じる後継予定者とも、これまでたくさん会ってきました。

しかし、創業社長は「まだまだ」と言います。

なぜ、このような現象が、多くの事業承継を控える会社に起こるのでしょうか?

これは「ニワトリが先かたまごが先か」という話に通じると考えています。

座学と実践には大きな乖離が

私は10年ほど前から、経営者の前でお話する機会をいただくようになりました。

その頃、私の役職は「専務取締役」、経営に携わる一員ではありましたが、経営者ではありませんでした。

仕事柄、多くのビジネス本を読み漁り、さまざまな勉強会でインプットしたものをコンサルティングや研修の現場で、お客さまである経営者にアウトプットしていました。

そして時が経ち、今から7年前に後継者として代表に就任しました。

代表に就任して、さらにお客さまの前で話をする機会が増えていったとき、ふと思ったことがありました。

これまでの自分は、本で勉強したことをそのまま伝えているだけだな、と。

代表に就任して、経営というものが体感でき、経営者の前で話をするときは、その感覚も一緒に伝えられるようになったと感じたのです。

つまり、「経営を学ぶ」ことと、「経営をする」ことは、次元が違うことと認識しました。

現在、60代後半から70代にかけての創業社長は、良くも悪くも自己流で経営を確立してきた人です。

一方、後継者は温室育ちで、若い時期から経営の勉強をさせてもらっています。

経営をしている創業社長と経営を学ぶだけの後継者とでは、経営能力という点では差が開くばかりです。

前述の「育たない」は、創業社長との差がどんどんついていくので、後継者が育っていないように見えるだけ。

「まだ早い」は、創業社長の自分と比べたら、いつまで経っても後継者は未熟なはず。

そこで、ニワトリが先かたまごが先か!

経営を学ばせているだけでは、いくら時が経過しても「育たない」「まだ早い」は解消されません。

実際に「経営を任せること」以上に、後継者の経営能力を向上させる術はないのです。

社長を交代しないから「育たない」のであって、継がせれば「育っていく」のです。

長く経営に携わり経営能力のある創業社長も、歳をとれば人としての衰えが生じてくるものです。

いざというとき創業社長がリカバリーできる早い段階で後継者に経営を任せることが、創業社長も認める後継経営者になっていく近道なのです。