バトン承継コンサルタントの浅野泰生です。

今週は、他社主催の研修で講師として話す機会をいただきました。
その研修のコンセプトは、会社の幹部やその候補生に向けて「考える力」を養うというもの。

主催者から講師へのリクエストは2つ。
なるべく講師が話さない(教えない)こと、そして、受講後に参加者をモヤっとさせたまま終了すること。

普段は話し手として、納得させる、スッキリさせる、満足させることを目標にしています。

講師経験ではじめての切り口でした。
私にとって、「考える力」が必要でした(笑)

さて、今日は後継予定者からの質問に答えます。

金融機関系シンクタンクで講師を務めたときの休憩中に名刺交換に来られた後継予定者。
現在は、お父様が社長を務め、3年以内に2代目として事業承継する予定とのことでした。

「自分が社長になったとき、先代から口出しされないようにするにはどうしたらよいか?」という質問でした。

会長になっただけでは

私の経験上、社長が会長にスライドしただけでは、120%新社長の経営に口を出すと言い切れます。
先代社長が創業者であれば尚更です。
創業者にとって会社は自分の持ち物だからです。

先日も、とある会社でのこんな話がありました。
経営を引き継がせたはずの新社長が雇った社員が気に入らなかったらしく、創業者である会長から社長に「あいつは使えないから辞めさせろ。辞めさせられないなら、社長のお前が辞めろ」と言ったそうです。

後継者の応援団を自称している私は、このような話を聞くと憤りを感じます。
私自身も後継者時代に同様の経験をしているので、自分に重ね合わせてしまうからです。

そこまで言うのであれば、なぜ社長の座を譲ったのか?
死ぬまで自分がやればいいのに、とさえ思います。

決して社員一人の存在が軽いという意味ではなく、社長の人事と一般社員の人事を同列に見ていることそのものに腹が立ちます。
こういう会長に限って外面はいいので、余計に新社長は苦労するのです。

先代から口出しされないためのヒント

話を戻しますね。

以前にも少しだけふれましたが、社長を譲った会長が口出しをしないようにする方法の一つとして、会長に新たな肩書きと役割を与えるというものがあります。
今までとは違う仕事でのやり甲斐を持っていただくということです。

当社のお客さまに、そろばん教室を全国展開している会社があります。

創業者である会長は、個人のそろばん塾から始め、教室を増やし、会社を大きくしたところで、血縁関係のない2代目に事業承継しました。
2代目社長もさらに事業を拡大させ、順調に会社も成長しています。

会長になった創業者は、そろばん博物館の館長としての役割と、その博物館内で自らも子どもたちにそろばんを教えています。

2代目社長は、本当の意味で経営を任され、会長との関係も良好です。

昭和の時代を経験している経営者は、仕事は仕事、趣味も仕事とばかりに、仕事に専念してきた人たちです。

仕事人間から仕事を急に取り上げては、手持ち無沙汰になってしまいます。

何もすることがなければ、新社長の経営に口を出すことくらいしかできなくなるからです。

後継者の皆さんには、会社を成長させることと、先代との良好な関係性を築くことを、両立してほしいと願うばかりです。