バトン承継コンサルタントの浅野泰生です。
今回は、後継経営者の方に向けた経営基礎講座として、後継者がなぜ非連続な未来を創るべきなのかをお伝えいたします。
目標と戦略
『後継経営者ならではの目標設定とは?』で、目標は過去の延長ではなく会社のありたい姿を思い描くことが重要であるとお話しいたしました。
しかし、目標(What)を設定しても、その目標をどのように達成していくのか具体的な戦略(How)がなければ、社員はどのように動けばいいのかわかりません。どんなに社員が意欲的でも、なかなか目標にたどり着けないと閉塞感を抱き、疲弊してしまいます。
また、社長のやりたいことが伝わらず、社員からは「会社がどこに向かっているのかわからない」と言われかねません。
後継経営者は、果たしてどのような戦略を描けば良いのでしょうか。
今回は、後継経営者だからこそ求められる戦略の描き方を、創業者との経営スタイルとの違い、時代背景の違いから考察します。
後継経営者は駅伝ランナー
例えるならば、後継経営者は駅伝ランナーです。
創業者は、会社を起業し、成長させます。
とにかく前だけを見てペースも考えず全速力で突っ走ります。
後継経営者はタスキをもらったらそうはいきません。
タスキを受け取ったその瞬間から後ろのランナーに抜かれないことを意識しなければいけません。
同時に、前方にいる走者を追い抜き、あわよくばより良いポジションで次のランナーにタスキを渡す努力をしなければいけません。
タスキに込められたもの
当然、ランナーのリタイアは倒産を意味します。経営者は代々会社を引き継ぎ、成長・発展させようとしますので、そのタスキは年々重く大きくなっていきます。
後継経営者が受け取るタスキには、様々なものが込められています。創業者の想い(=理念)、社員、事業(商品・サービス)、業績、お客さまとの関係性などなど。
後継経営者は先代から継承された資産(ヒト・モノ・カネ)を活かしながらも、過去からの延長線ではない非連続な未来を実現しなければいけません。自らのありたい姿をカタチにし、お客さまも社員も幸せを感じられる企業として成長を遂げる責任があるのです。
非連続な成長戦略
加えて、『後継経営者が漠然と感じる将来への不安の正体』でも述べましたが、環境は絶えず変化し、今は予測の困難なVUCA(ブーカ)な時代です。
あらゆる市場で既存ビジネスモデルの崩壊・再構築が始まり、商品・サービスの新陳代謝はどんどん激しくなる現代において、後継経営者のこれからの経営スタイルとして必要なのは、与えられた市場のパイを奪い合うものではありません。
市場そのものを創出・拡張するような前提条件のない自由な発想から生まれる戦略です。それを、私たちは非連続な成長戦略と呼んでいます。
胸を張ってタスキを渡せる経営者を目指す
後継経営者時代、私は胸を張ってタスキを渡せる経営者を目指していました。
そのためには、先代からの想い(=理念)を承継しつつ、既存事業のポテンシャルを最大化し、新規事業の種まきを進め、自分らしい成長戦略を描くことが必要です。
しかし、いくら非連続な成長戦略を描いても、引き継いだ時点において、経営者の経験という観点では後継経営者は創業者には到底かないません。
経験が足りない部分については、経営幹部ともに経営チームをつくり、経営をしていくことをおすすめしています。
経営チームとともに、「自分らしい経営」を実践し、次代へ胸を張ってタスキを渡せる経営者を目指していただきたいと思います。